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まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている。

小さなといえば、明治初年の日本ほど小さな国はなかったであろう。

産業といえば農業しかなく、人材といえば三百年の間、読書階級であった旧士族しかなかった。

明治維新によって日本人は初めて近代的な 「国家」 というものを持った。

誰もが 「国民」 になった。

不慣れながら 「国民」 になった日本人たちは、日本史上の最初の体験者として

その新鮮さに昂揚した。

この痛々しいばかりの昂揚が分からなければ、この段階の歴史は分からない。

社会のどういう階層のどういう家の子でも、ある一定の資格を取るために

必要な記憶力と根気さえあれば、博士にも 官吏にも 軍人にも 教師にもなりえた。

この時代の明るさは、こういう楽天主義から来ている。

今から思えば実に滑稽なことに、米と絹の他に主要産業のないこの国家の連中がヨーロッパ先進国と同じ海軍を持とうとした。

陸軍も同様である。

財政の成り立つはずがない。

が、ともかくも近代国家を作り上げようというのは、もともと維新成立の大目的であったし、維新後の新国民達の少年のような

希望であった。

・・・

彼らは、明治という時代人の体質で、前をのみ見つめながら歩く。


上っていく坂の上の青い天に

もし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみを見つめて

坂を上ってゆくであろう。


2012/09/16


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